帰国子女としての経験から日本の英語教育に疑問を抱き、中高生の頃から「こうやって教えたらもっといいだろうな」と考えていたというESL club講師のA.M先生。レッスンではそんな気づきを抱いていたからこそ思いつく工夫を日々実施し、生徒の成長へ導いています。
今回はESL club講師として活躍するA先生に、生い立ちや英語スキルを伸ばした方法、英語学習に対する考え方などをインタビューしました。
目次
小学校卒業までの9年間アメリカで生活
まずは簡単に自己紹介をお願いします!
ESL club講師のA.Mです!講師歴はもうすぐ5年目に突入します。
生まれは福島県ですが、3歳の時に父の仕事の都合でアメリカのワシントン州に引っ越しました。結局小学校を卒業して中学に入る頃までの9年間をアメリカで過ごすことになりました。補習校と家庭以外では日本文化に触れないまま育ち、12歳のときに帰国し、群馬県で中学・高校時代を過ごした後、都内の大学に進学し、卒業。今年の春から大学院に入学しました。
アメリカでは、どのような教育を受けていましたか?
月曜日から金曜日まではアメリカの現地校、土曜日に日本人学校(補習校)に通っていました。補習校では、1日の時間割が国語と算数の2教科のみでした。週に1度の登校で1年分のカリキュラムを終わらせる必要があり、宿題もあったので結構辛かったのを覚えています。週末をエンジョイする現地校の友人が羨ましかったのを覚えています。
勉強漬けですね!
日本の小学生と比べれば全然勉強していなかったと思います。現地校の学習進度は日本と比べて遅く、宿題もほとんどありませんでした。特に算数は、日本の学習進度のほうが随分早いように思います。補習校で先に習っていたおかげで、現地校の算数はラクできましたね(笑)
英語力維持のために英検取得・自主的に英語に触れた中高時代

日本に帰国してからのお話を聞かせてください
中学1年生の6月から、中高一貫の公立校に通いました。
中学1年生の6月という微妙な時期での編入だったうえ、同学年には私のように海外生活が長い生徒が他にいなかったので、最初は稀有な存在として扱われていましたね。それでも、積極的に声をかけてくれたり、一緒にお昼を食べようと誘ってくれたクラスメイトがいたことにとても救われました。
日本の学校にしっかり通うのも初めてだったので、「上履きと体育館シューズは異なる」「校則で髪にシュシュをつけるのはNG」といったアメリカ文化やアメリカの学校の校則との差に驚きました。部活動や定期テスト、塾などで忙しい日本の学生はすごいな、とも感じていましたね。正直、中学時代は日本での学校生活に慣れるのに苦労しました。
日本の学校生活に馴染むきっかけはありましたか?
中学2年生からバレーボール部に入部したことは、1つのきっかけだったかもしれません。運動部だったこともあり、アメリカでは馴染みのなかった先輩・後輩といった上下関係や敬語を学ぶよい機会になりました。「年長者を敬うって、こういうことなんだな」と、だんだん日本の文化を理解できるようになりました。
英語の学習は、どうしていましたか?
学校の英語の授業以外で特に英語を使う機会はなく、最初は塾などに通って英語を勉強しよう、という気持ちはありませんでした。ただ「このまま学校英語を学ぶだけでは英語力は上達しない」「現地の小学6年生の英語レベルで終わってしまう」「せっかく身についた英語を忘れてしまうかもしれない」という危機感は常にありました。
英語力を伸ばすために取り組んだことはありますか?
英検受験を推奨する学校だったこともあり、中学生の時に初めて英検に挑戦しました。中学3年生で英検準1級、高校1年生のときに英検1級を取得しました。
他には、テレビや動画、インターネット検索などで、意識的に英語に触れるようにしていました。たとえば日本のニュースを英語記事で読むことで英語でその話題について理解できようになり、徐々に小学校6年生レベルの英語力から抜け出せたように思います。
また、アメリカのとあるシンガーソングライターの大ファンになり、曲の歌詞やインタビューなどを理解したくて英語を調べることもありました。中高生の頃、SNSでファンアカウントを作って英語で運営していたので、さまざまな国の方とリアルな英語でコミュニケーションを取る機会があったことも、英語力アップにつながったと思います。
「英語を頑張りたいから教えて!」など、英語に興味を持ってくれる同級生が多かったのも、よい刺激になりました。
自分の世界を広めるため、新たな言語に興味を持つ

ネイティブ英語と学校英語のギャップはありましたか?
日本の英語授業では文法や定型文に重点を置いて習うことに違いを感じました。特に文法は、改めて机上で習うことによって変に意識してしまい逆効果だったので、あえて気にしないようにしていましたね。英語が公用語であるアメリカと違い、日本では第二言語として英語学習を進めるためカリキュラムに根本的な違いがあるとは思うのですが、ネイティブ話者はあまり使わないフレーズなどを学ぶことにも、若干の違和感はありました。
ただ、単語帳による学習はとても役立ちました。高校英語レベルになると、日本語でも難しいような社会的な単語が登場します。単語帳で学んだ単語を英語のニュースで見かけることもありました。毎週のようにあった英単語テストの勉強に一生懸命取り組んでいたことを覚えています。
高校卒業後の進路はどのように選択しましたか?
大学に進学し、ヒンディー語を学びはじめました。2025年の春からは大学院で、第二言語習得論について学んでいます。
中学・高校時代、英語の授業を受ける中で「こうやって教えたほうが、きっと身につくのに」と感じることが多々ありました。周囲から英語を教えてほしいと頼まれる機会も多く、「自分も英語や日本語以外の言語をゼロから学ぶ体験をしてみたいな」と思ったことが、言語に興味を抱くきかっけになりました。
ヒンディー語を選んだのは、日本ではあまり知られていない言語であるものの、話者人口が英語・中国語に次いで世界で3番目に多いことを知り、「アメリカと日本しか知らない自分の世界は狭いな。もっと他の世界を知りたいな」と興味をもったことがきっかけです。
ESL clubとの出会い

ESL clubで講師をはじめたきっかけは?
大学1年目の夏季休暇にとある個別指導塾で、オンラインで英語を教える機会がありました。でも、求められていたのは「文法を教える日本の英語教育」だったので、上手く期待に応えられませんでした。帰国子女が文法に強くないのはありがちだと思うのですが、周囲からは「英語が話せるなら文法を教えるのも余裕でしょ」とみなされやすいんですよね。
この経験から、次は日本の英語教育にとらわれずに教えられるところがいいな、と考えて調べたところESL clubの求人を見つけました。「英検1級以上」といった高い採用基準を見て、「きっとここでは自分のようなバイリンガルの方が活躍しているに違いない!」と確信して応募しました。
研修では、日本の英語教育が抱える課題も教えていただきました。共感するテーマばかりで、中学・高校時代に抱いていた英語教育に関する疑問やモヤモヤがすべて払拭されました。「ここで働きたい!」とピンときて、大学2年生の春から講師として働き始めました。
働き始めてから感じたギャップはありましたか?
生徒さんの意識の高さに、とても驚きました。英語が好き・興味があるという生徒さんが多いので私自身も楽しく教えられます。生徒さんからいつも多くの刺激をもらっています。
講師のレベルの高さにも驚かされ、「早く先輩に追いつきたい!」という気持ちでした。対面でのコミュニケーションが取りにくかったコロナ禍は毎月のようにオンライン講師研修があり、講師同士英語でディスカッションしたのはよい思い出です。
大学時代にシンガポールへ1年留学、英語のアウトプットスキル向上につながった

大学以降のA先生の英語学習について教えてください。
大学3年生のとき、1年間シンガポールへ交換留学しました。英語に囲まれた環境は久しぶりで、モチベーションが上がりましたね。授業では大学レベルの英語が扱われますし、周りの学生は本当に熱意があって、授業中の発言もとても積極的でした。意欲の高い学生たちの中で戦うには、自分からどんどんディスカッションに参加しなければなりません。英語知識のインプットだけでなく、アウトプットのスキルを高められました。
家族と離れて異国で生活しながら異文化に触れて、さまざまなバックグラウンドをもつ人達と接することで、視野が広がったと感じています。時間とお金が許すのであれば、生徒の皆さんにも、短期でもよいので留学をおすすめしたいです!
留学後、ESL clubでの指導に何か変化はありましたか?
生徒さんと授業中のコミュニケーションで引き出しが増えたと感じています。英語に関しては、アメリカのみの知識に偏りがあったところにシンガポールでの経験が増え、より幅広い文化的背景や体験エピソードをもとにしたレッスンができるようになったのではないかと思います。
ESL club講師としての考え方

A先生はレッスンでどのような工夫をされていますか?
生徒一人ひとりに合わせたレッスンを行うESL clubでは、講師の指導方法を制限するようなマニュアルはありませんし、スクールマネージャーから「こうしなさい」と強要されることもありません。講師は生徒一人ひとりと向き合いながら、それぞれに合ったレッスン方法を模索します。レッスン中の生徒さんの様子から判断して、その場で教え方を切り替えることもあります。
そのため、レッスンの仕方は生徒さん一人ひとり変えています。ただ「生徒さんも自分も楽しい空間を作る」ということは、共通して意識しているポイントです。どちらかがつまらないと感じるレッスンは、双方にとって楽しくない時間になってしまうだけでなく、生徒さんは質問もしにくいと思います。
たとえばスポーツ好きな生徒さんであれば、アイスブレイクの時間にスポーツ関連の質問をするなど、お互いがレッスンを楽しめるような環境づくりを意識しています。
またオンラインレッスンならではの注意点として、生徒さんのちょっとした表情や仕草を見逃さないように心がけています。たとえば少しでも疑問が残っていそうな気配を感じたら、質問がなくても私から不明点がないか積極的に確認します。
A先生から、理解度チェックの質問をすることがあるのですね?
はい。レッスンの理解度をチェックするときは、5W1H(いつ・どこで・だれが・なにを・なぜ)の質問方法を基本に深堀りしています。
生徒さん自身が「どこがどのように分からないのか分からない」「質問を上手く言語化できない」というケースもあります。そんなときはクローズドクエスチョンで、イエスかノーで回答できる質問に答えてもらいます。そのうえで、どうしてそう考えたのか、理由を尋ねます。生徒さんが自分では気がついていないような理由を引き出して、言語化をサポートする狙いです。
なるほど!A先生の指導で生徒さんの変化を感じたことはありますか?
ESL clubには、真面目で優秀な生徒さんが多くいらっしゃいます。一方で、優秀だからこそ、自らを「こうでなければいけない」といった固定概念に縛りつけてしまうことも珍しくありません。たとえばライティングでは「事実に基づいた説得力のある、綺麗な文章を作らなきゃ!」と思い込むあまり筆が進まない、というケースもあります。
「こういう方法もあるんだよ」「まずはこんな風にもっと簡単に答えてみよう」といった、ちょっとした声かけをするだけで、スムーズに英語が出てくることがあります。生徒さんの視野の外からアドバイスしたり、肩の力が抜けるように声かけをしたりして、アウトプットしやすい環境を整えることは大切だと感じています。
ESL clubの講師を続ける中で、嬉しかった出来事はありますか?
レッスンでコミュニケーションを重ねることで、シャイな生徒さんが自分から英語で意見を発言してくれるようになったときは、とても嬉しかったです!ABCから英語学習をスタートして、たった数年で英検2級に合格するなど、生徒さんの目覚ましい成長を間近で見守れるのも本当に嬉しいです!
関連記事:インターナショナルスクールとの両立で英検2級合格!帰国子女は英語ができるを乗り越えた秘訣
英語学習者に伝えたいこと

ESL clubでは、日本語・英語が話せるバイリンガル講師が活躍しています。A先生が考える、バイリンガル講師ならではの指導の強みは何ですか?
ESL clubの講師は全員、人生どこかのタイミングで生徒さんと同じ立場に立ったことがある、という点です。「日本語を先に習得していて、英語学習に苦労した」「英語に囲まれて育った帰国子女で、帰国してから日本語習得に苦労した」など、講師の誰もが言語学習に苦労した経験をもっています。最初から母国語として英語を話せるネイティブスピーカーとは異なり、言語学習の苦労が身に染みて分かっているからこそ、生徒さんの気持ちや状況を理解して、寄り添った指導方法を検討できます。
たとえば日本語を母国語とする日本人は、外国人から「は」と「が」の使い方の違いを問われて、上手に教えられるでしょうか?日常的に「助詞はこの位置でこれを使おう」など文法を意識しなくても、いわゆる感覚だけで無意識に母国語を扱える日本人がほとんどだと思います。
それと同じで、英語のネイティブスピーカーの場合、母国語だからこそ英語学習者がつまずくポイントに深く共感できないことがあると思います。その点、生徒さんたちの数年後~10数年後の未来像である私たちは、生徒さんの「分からない」という感覚がよく分かりますし、それを乗り越えてきた経験があるので、的確にアドバイスしやすいと考えています。また既にできている部分を繰り返し教えても、成長にはつながりません。生徒さんのできる・できないの境目を見極めて適切な指導につなげられる点も、バイリンガル講師の魅力だと思います。
日本文化と海外文化の違いを理解したうえで指導できる点や、教科書に沿った内容を教える英語ではなく、実践のための英語を身につけてきたことも強みです。バイリンガル講師が教える英語レッスン気になる場合、ぜひ一度ESL clubの無料体験レッスンに参加してみてください!
ESL clubは、どのような方におすすめだと思いますか?
誰にでも幅広くおすすめできます!たとえば「中学から本格的に学習が始まって英語が嫌いになってしまった」という方にも、ぜひESL clubで英語を学んでいただきたいですね。私と同じように「帰国子女で英語を忘れたくない」という方や「英語に興味があるからもっと実力を伸ばしたい」という方など、バックグラウンドや理由を問わずおすすめです。
英語力を伸ばしたい方に、メッセージをお願いします!
少しでも英語を頑張ってみたいという気持ちで英語学習に関する情報を調べ、この記事にたどり着いてくださったとしたら、その時点ですでに大きな一歩を踏み出せていると思います。
英語を学びさまざまな価値観に触れることで、今以上に広い世界が見えてきます。思いがけない挑戦をするきっかけにもなるかもしれません!英語を使って未来の可能性を広げる楽しさを知ってもらえたら嬉しいです。
1つのことを突き詰めるのは、本当に楽しいです。最近では、生成AIを使えば簡単に英語を翻訳できて便利ですよね。だからといって、言語学習が不要になったわけではないと思います。日本語・英語・ヒンディー語を現地で使った私自身の経験から、人間同士のコミュニケーションにおいて言語は1番重要だと実感しているためです。
とはいえ、英語学習を難しく考え過ぎないでほしいという気持ちもあります。もちろんESL clubの講師・スタッフがしっかりサポートするものの、英語学習を継続してスキルアップしていくためには、生徒さん自身のモチベーション維持が非常に大切です。英語学習を難しくとらえ過ぎず「やればできる!」「習得して損はない!」くらいのリラックスした気持ちで学びを楽しんでいただければ、と思います。ESL clubが楽しく英語を身につけるきっかけになれば、もっと嬉しいです!
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