ESL clubでは多くの生徒たちが中学受験の準備と英語学習を並行しています。しかし、学校や塾の宿題だけでもなかなか時間がとられます。それに加えて「英語学習」にも時間を使うのはとても難しいことです。
今回は、実際に『受験勉強と英語学習を両立している保護者の方々の経験を聞きたい』というESL club生の保護者さまからご希望をいただき、インタビューが実現いたしました。
ESL clubに通い小学6年生で英検準1級に合格し、中学受験では桜蔭中学に合格したお子さんをもつ神谷さんにインタビューしました。
「中学受験をさせるべきなのか迷っている」
「なかなか成績が伸びず不安を抱えている」
「受験勉強と英語学習のバランスがとれず悩んでいる」
このような思いをお持ちの方にお読みいただければ、きっと前に進むきっかけがあるはずです。ぜひお読みください。
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中学受験を意識したのは幼稚園の頃から
―早速ですが、お子さんにはいつ頃から中学受験をさせようと思われていたのでしょうか?
小学校に上がる前からですね。受験するなら中高一貫校で大学受験を経験して欲しいと思っていました。娘に対しては、時期が来ていきなり受験を伝えたのではなく幼稚園の頃から家族でも決めていて、繰り返し伝えていました。
―中高一貫校を選んだ理由を教えてください。
当時は、基本のカリキュラムが、公立の学校に比べてしっかり考えられて教育をしているという印象だった。中高一貫校は勉強のカリキュラムが6年分考えられているので、継続して勉強できると思いました。
―受験に関する情報はどのように情報収集されたのでしょうか。
Webサイトや新聞、プレジデントファミリーなどを読んで比較検討しました。当時、英語教育やリーダーシップ教育が話題になっていた時期で、カリキュラムが豊富な学校を探していました。
私自身、外資系で働いており、英語はもちろん、様々な文化的な背景をもっている方々と働いていくということを考えると、日本人としてリーダーシップを持って働くことが必要になると思っていました。
比較検討する中で、公立の小中学校だと文部科学省の指導要領の範囲内なので、私立の方がアクティブラーニング(体験を通して経験させて、そこから考えさせて学ばせる学習)やリーダーシップ教育などといったカリキュラムが少し先を行っていると感じました。また、そういうことを学んでいかないと、海外にも通用しないということを感じました。
―幼稚園の頃からお話をされていたとのことですが、話し方は重要だと思います。娘さんには受験に向けてどのように話をされましたか。
公立へ上がると、今いるお友達の数のままだけど、私立に入ると今以上に友達が増えるよとか、勉強すると沢山のことがわかるようになるよ、可能性が広がればお金を沢山稼げるよ、人生が開けるよ…などと伝えていましたね。
何より、なぜその勉強をしているのか、何のために学んでいるのかを、勉強している本人も実感することが大事だと思い、伝えていました。
―包み隠さずお話されていたんですね。お子さんに率直に伝えるのが難しいというお父さん、お母さんも多いですが…
やはり親が迷っていると、子供は感じ取りますよね。だから親が迷ってはいけない。公立に上がるのも一つの手段ですが、選択肢の中に中学受験があるのなら挑戦させた方がいいと思いますよ。失敗してもそこから学ぶことも出来ますし。
不安は家族全員でプラスに変えていく
―失敗しちゃったら…と考えることもありましたか。
「失敗したら…」ということを考えることもありますが、失敗したらどうしようと悩むよりも、合格するにはどうすれば良いかを考えていましたね。
自分の子どもより絵が上手な子どもがいたら、それを「才能があるから」で片付けるのではなく、「あの子はなぜ絵が上手なのかな? 努力しているのかな? それともお母さんが教えているのかな?」と、子どもと一緒に、前向きに答えを探すようにしていました。
―お子さんが困難に直面した時はどのように声をかけたり、接したりしていましたか。
今やっている方法がダメだったら、次の方法を探して試しました。それでうまくいったら、「このやり方が良かったんだな」という試行錯誤を繰り返していました。「受験は親の関わり方も大事」というのは、この部分にあるのだろうと思います。必ずしも「塾に行っているから受験に成功する」のではなくて、塾に行ってもうまくいかない時もあります。
もしうまくいっていないなら、何故ダメなのか考えて塾に伝えることも必要だし、塾が合っていないのであれば変えることも選択肢の一つです。今はインターネットでも多くのことを調べられるので、様々な人の成功体験を調べて、自分の子供と比べてオリジナルなやり方を考えると良いのではないか? と思いますね。
色々とやり方を調べるときにも、一方的に「これがだめだから、あれをやりなさい」「これができないからこれをやりなさい」ではなくて、「あの時うまくいかなかったけど、なんでかなー?」と問いかけていました。「じゃあ今度はこういうふうにやってみようか」だったり、「あの子はきっとこういうやり方をしているから、やってみようよ!」などと、声のかけ方もかなり工夫しました。
―普段の勉強や、塾の送り迎えなどをお母さまが担当することもあり、子どもと過ごす時間多いほど、不安になることもあると思いますが…
私の妻も、塾のテストの点数を見て不安になった時もありました。できる時もあればできない時もあるので、「そこで一喜一憂してもしょうがないよね」と妻に伝えていました。
今できても、受験の時にピークでないと意味がないので、低迷しているので悩むのではなく、どうすべきか考えました。
子どもの得意と苦手を分析し導く
―どのようにお子さんの学習を分析されたのでしょうか。
国語だったら、塾で習っている説明文や物語文の読み方があると思いますが、習ったことを娘が本当に実践しているか聞きました。それが実践できていないようであれば、問題を解く前に、物語文の読み方をまず紙に書いてみて、その通りに問題を解かせるといった取り組み方です。
―塾でやったことを一緒に復習するようなイメージですね。
そうですね。塾で習っているのだからしっかり復習し、それに慣れたら本番でもできると思うんです。
他には勉強のスケジュール管理もするようにしました。やるべきものを紙に書き出して「宿題で絶対取り組む」内容は〇、「時間があったら取り組む」内容は△と、見える化されていました。
〇だけをやるのではなく、どうしたら△に取り組む時間を確保できるのか娘と一緒に考えました。スケジュール管理を塾や子どもに任せきるのではなく、親も参加するのが重要ですね。
―学校に塾に、ESL clubに、宿題が盛りだくさんな気もしますが、遊ぶ時間はありましたか。
テレビの時間もゲームの時間もありました。
受験目前の小学6年生の頃は火・木・土・日と週4日塾に通い、通った次の日は復習。受験目前にはスケジュール管理の習慣が身についていたので私が何も言わなくても自分で管理していました。
塾のない日も3時間は宿題や勉強に費やしていたと思いますが、それ以外はリラックスしていました。
―勉強をしていて、「自分の子どもは勉強が苦手かもしれない」と悩んだことはありましたか。
正直なところ絵が上手いほうではなかったので小学受験は苦労するかな?と思っていました。しかし、それは描き方を知らなかっただけで、わかるようになるとだんだんと描けるようになりました。
小学校受験の場合は様々で、ペーパーテストで受かる学校、芸術で受かる学校、対人関係で受かる学校と、学校によってそれぞれ異なっているので、子どもに合った学校を見つけるのが大切ですね。素養があるなしの前に、私たちは「努力すれば受かる」という成功体験を持って欲しかったので、勉強を継続させ、努力させました。
―受験を通じて成長したと感じていることを教えてください。
受験しなかったら、おそらく中学生では読まなかったであろう文学史や、環境問題の話題に興味を持つようになりました。入試のために時事問題の勉強もしていたので視野が広がりましたね。様々なことに触れると人生が豊かになる。そのきっかけが受験だったって感じですね。
受験勉強が忙しくなっても英語学習は継続すべき
―次は英語学習についてお伺いします。受験勉強が始まると時間配分が難しく、一時的に英語学習から遠ざかってしまうご家庭もありますが、神谷さんの家庭が英語学習を続けた理由を教えてください。
受験勉強が忙しくなるので、直前の時間配分は考えようと思いましたが、何があっても英語は続けてもらおうと思っていました。
というのも私自身、外資系企業に勤めていることもあり、日本人が外資系で社長になることや、ネイティブスピーカーと対等に働くことは努力なしには厳しいのが現実です。そのため、最終的に英語で仕事をして欲しいのであれば、英語学習の時間を絶やさないことはとても大切です。英語は継続しないとすぐに衰えてしまう。そういった背景もあり、中学受験の勉強が忙しいからといって英語学習を中断するのは、正直怖いなと思っています。
しかし、親だけが決めてしまうのはよくないと思うので、子どもは英語を使ってどうしたいか、どうなりたいかを明確にしてあげました。たとえば、「必要だと思うから」という理由をさらに掘り下げて「どのレベルで必要なのか?」と。将来的に外資系の社長を目指すのか、それともプレゼンが出来ればいいのか、友達を作りたいのか。どうなりたい? どうなって欲しい? を考えるといいと思います。
―英語学習に関して目標設定はされていましたか。
小学校卒業までに英検準1級を取得できるようにスケジュールを組んでいました。
英語学習を楽しく進められるまでは時間もかかると思うので、早めに沢山触れて、受験が忙しくなる5年生頃までに準2級・2級にもっていこうと思っていました。
そうすれば受験勉強もすんなりできるし、中学になったらTOEFLの勉強にも進めるので、それ以降の目標設定がしやすくなります。
そこで、2年生の終わりから5級を受け始め、4年生の夏に2級に合格しました。そのあと、1月に準1級を初受験しましたが、やはり難しかったようで最終的に6年生の前半で合格しました。
―準1級が難しかったとのことですが、ご家庭で自主的に取り組んでいることがあれば教えてください。
準1級になると用語も時事問題と絡めて高度になってくるので、読売新聞、週刊STとジャパンタイムスを読んで語彙力や読解力を高めていました。ジャパンタイムスには英語と日本語の単語欄があるので、難しい意味の単語は辞書を引いて調べていました。
―英検に向けての勉強は他に何かされましたか。
週1でESL clubに通って勉強の継続、ケーブルテレビを契約して息抜きに英語のアニメを鑑賞、月に1.2本は洋画を観に映画館へ行きました。勉強以外にも楽しみながら、少しでも英語に触れるようにさせていました。
―神谷さんがお子さんに思い描く将来は
自分の興味のある分野で立派になって海外で活躍して欲しいですね。そのためには勉強、英語、人柄と様々な部分があると思いますが努力して、勝ち取っていってほしいと思います。
英検や机上の勉強だけでなく、長期休暇中にホームスティなどにも参加し、英語を通じて様々な経験をさせてあげたいですね。今後も学校の勉強に、英語学習にと、勉強をし続ける必要がありますが娘のことを見守りつつ、私たちも最大のサポートをしていきたいと思います。
編集後記
いかがでしたでしょうか。
今回お父様にインタビューさせていただく中で印象に残っていたことが、「とにかく子供がつらくならないように」「大変なときに寄り添ってあげる」などの娘さんへの気遣いでした。少しでも楽しく頑張り続けられるように、お父様自身も折れずに工夫をし続けていると感じました。
「子どもに受験させる」ということを決めた時から『サポートしつづける覚悟』を持っていたのだと思います。
子どもには、当然愛情を注いでいると思いますが、その意思表示の方法はなかなか難しいですよね。子どもの勉強を見ていると、どうしても良くない部分が目立ちます。そして「これができないから、やりなさい」という声かけになってしまいがちになるという声をよく聞きます。
そんなときに、できるようになる工夫や、やるべきことを話し合って、子どもと一緒にやることを決めていくことが、あきらめずに楽しく努力し続けるコツなのかもしれません。そうすれば、お子さまが自分から工夫をしてくれるようになるはずです。
もうひとつ、お父様のお話のなかで印象的だったのは、
「受験勉強が忙しくなるので、直前の時間配分は考えようと思いましたが、何があっても英語は続けてもらおうと思っていました。」
という言葉です。
お父様自身の外資系企業での経験から、やはり中学受験でいくら忙しくても、英語学習は継続していくことが重要だというご認識だったようです。
お父様の英語に対する意識、そしてお子さんの中学受験を寄り添いながらサポートしていくという覚悟、この2つがあったからこそ、『桜蔭中合格』、『英検準1級合格』という2つの目標を達成できたのだと感じました。
神谷さんのように、できるようになる工夫ややるべきことを話し合って、子どもと一緒にやることを決めていくことが、あきらめずに楽しく努力し続けるコツなのかもしれません。そうすれば、お子さまが自分から工夫をしてくれるようになるはずです。
このがんばりの過程を楽しむことが、お子さまの将来にとって、きっと何よりも大切な財産になります。