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お堅いイメージとは大違い! 本当はエンタメ的な英語ディベート-小野暢思さん×倉田芽衣さん対談

 

国内外のディベート大会で日本人史上最多優勝を誇る若きレジェンド・小野暢思さんをお招きし、英語ディベートのルールや魅力、教育にもたらす可能性をうかがった前回記事。英語ディベートの有用性が十二分に分かったと同時に、競技性やエンタメ性の高さが垣間見えた対談でもありました。

 

今回は小野さんに加え、現役世代のエース格・倉田芽衣さんにもお越しいただき、ディベートの楽しさについて存分にお話いただきたいと思っています。マニアックなようで、共感できる部分も多い英語ディベートの世界をお楽しみください。

 

<小野暢思(みつし)さんプロフィール>

パーラメンタリーディベート全国大会での32回の優勝(史上最多)、World University Debating Championship(パーラメンタリー ディベート世界大会)での部門準々決勝進出など、国内トップクラスの実績を誇るディベーター。国内大手企業、外資系企業に務めた後、現在はプロディベートコーチとして、全国各地で中学生から大人まで英語ディベートの指導を行っている。

 

<倉田芽衣さんプロフィール>

ディベート歴9年。全国高校生パーラメンタリーディベート連盟杯や女性ディベーター最強決定戦Aoyama Women’s Cupでの優勝経験のあるディベーター。現在は、アメリカのグリネルカレッジで学ぶ傍ら、ESL clubの講師や英語ディベーターの後進育成にも関わっている。

 

 

世代を代表する2人

編集部:日本の英語ディベート界では世代を代表する存在のお二人ですが、面識はあるのでしょうか?

 

小野暢思さん(以下、小野さん):はい、元々は通っていた中高一貫校の英語ディベート部の後輩なのでかなり昔から知っています。卒業後も大会会場だったり飲み会で何度も会っています。意外と狭いコミュニティなので。特に僕は中学生や高校生を指導しているので、倉田さん世代のディベーターと接する機会が多いかもしれません。

 

倉田芽衣さん(以下、倉田さん):私たちの世代でディベートをやっていたら、どこかしらで小野さんのお世話になっているんじゃないですかね。直接指導いただくことはもちろんですが、スピーチを参考にしたり、貴重な音源をアップしていただいたり……。

 

編集部:音源というと?

 

小野さん:ディベート大会でのスピーチの録音データです。けっこう音源を聞く文化があるんですよ。スポーツやってる人がプロスポーツを観る感覚と近いかもしれません。趣味として聞いて楽しむこともあれば、上手な言い回しをマネするために聞くこともあります。


いろんなディベーターの音源を聞いて、ロールモデルを探すといったこともしてますね。話すテンポ感だったり、言葉選びや表情だったり。早口で力強い感じは自分には向いてないから、ゆっくりと優しい話し方ができるようになりたいって思ったら、そういうタイプのディベーターの音源を聞く、みたいな感じです。

 

倉田さん:私は小野さんがアップしてくれたりレコメンドしてくれた国内外の女性ディベーターの音源をよく聞いていました。

 

小野さん:それ、Youtubeでもすごく感謝されたんだよね。昔は女性ディベーターの音源がめっちゃ少なかったんですよ。やっぱり近い世代の同性のスピーチが参考になりやすいと後輩から聞いたので、意識的に集めるようにしてました。

 

嗚呼、憧れのスターディベーターたち

編集部:趣味として聞く場合って、クラシック音楽みたいに静かに噛みしめるように楽しむのか、それこそスポーツ観戦のように高揚して楽しむのか、どんな風な楽しみ方をすることが多いんですか?

 

小野さん:スポーツ観る感覚のほうが近いですね。毎年、年末年始に世界大会が開かれるんですが、ディベート界ではワールドカップ並に盛り上がります。決勝になるとみんな画面に張り付いてみてますね。それぞれ好きな選手がいるので、「オックスフォードの〇〇、勝て!」的なテンションで応援します。

 

編集部:本当にスポーツだ!アメフトとかと同じ楽しみ方ですね。

 

 

倉田さん:スター的な選手もいるんですよ。大会とかで会うと、みんながサインとか握手とかを求めにいくんです。そういうスター選手が来日すると、TwitterやLINEで情報が飛び交います。

 

小野さん:そういう選手って、日本の大会にフラッと出て優勝していく、みたいなことをたまにするんです。運良く居合わせたディベーターたちが「生で聞くとやっぱり違う」「なんでこんなカッコいいスピーチができるんだ」って盛り上がって。

 

倉田さん:ありますね(笑)
現役だけじゃなくて、旧世代のレジェンドみたい人もいて。大会会場にティム(Tim Sonnreich)がいたときは会場ザワつきましたよね。『First Principles』っていう、ディベーターならほぼ全員が読んでる教科書みたいな本の著者なんですけど。

 

小野さん:「伝説の書の著者来たー!」ってなったよね。あと、普通のおじさんだと思ってた人が実は昔の世界チャンピオンで、試合したら今でも超強かったとか、マンガみたいな展開もあるからおもしろいですよ。ワンピースのレイリーみたいなノリで。

 

スピーチ音源を肴に酒を飲む!?

編集部:小野さんや倉田さんも、後輩たちからすればスターですよね、きっと。

 

小野さん:そんなレベルにはなってないですけど、音源は聞いてくれてる人は結構いるみたいですねみんな最初は世界チャンピオンとか有名な音源から聞きはじめるんですが、それだとちょっと遠すぎて参考にしづらいので、だんだん身近な人の音源を聞くようになるんです。国内大会の決勝とか、地方予選で先輩が喋ったスピーチとか。

 

倉田さん:ディベーターで集まって飲みに行っても、みんな音源の話ばっかりしてますよね。それもすごいニッチなやつ(笑)。

 

小野さん:「〇〇大会の準決勝のこの人のあのパートすごいよね」みたいな。後輩が僕自身も覚えてない、5、6年前のローカルな大会の予選の音源を聞いてたり。「小野さん、あのパートすごかったです!」とか言われるんだけど、そんなこと言ったっけ?ってなっちゃって(笑)

飲み会あるあるだと、スピーチのモノマネする人もいますね。それもディベーターでも知ってる人と知らない人がいるくらいのマイナーなやつを。僕らはそれで爆笑するんですけど、傍から見ると何がおもしろいのか全然分からないですよね(笑)。

 

編集部:ニッチですねえ(笑)。でも、暗唱できてるってことですよね。それも嫌々覚えるんじゃなく、楽しみながら。暗唱って、英語学習にものすごく有効だと言われているので、遊びに近い感覚でそれができるのは強いなあと思います。

 

 

倉田さん:良くも悪くもオタクなんです(笑)。
パーラメンタリー・ディベーター御用達のスタンプもあるんですよ。過去の世界チャンピオンのスピーチで使われたフレーズとかが採用されてるんですが、ディベーターにしかわからないかもしれないです。

例えばこれは「My response to that is GOOD!」って書いてあるんですが……

 

小野さん:EUDC2008決勝です。キングス・カレッジ・ロンドンの。

 

倉田さん:そうそう。

 

編集部:え、いつ誰が言ったかまで覚えてるんですか⁉

 

小野さん:一言聞くと、だいたい分かるんですよ。

 

倉田さん:このフレーズも文脈なしに単体で聞くと意味が分からないと思うんですが、ディベーター同士ならみんな知ってるので使えちゃうんですよね。

 

ラップバトルさながらに盛り上がる大会会場

編集部:世間は高尚なイメージを持っていますが、実はかなりエンタメ性が高い競技なのかもしれませんね。

 

小野さん:そうですね。入り口は英語学習とか論理力鍛えたいとか実利的な理由があった人でも、そのうち単に楽しいからやる感じになっていくことが多いです。

 

編集部:聞いてて思ったんですが、音楽に例えるなら、クラシックよりもむしろラップのほうが近そうですね。「言葉で戦う」「即興」「観衆の評価で勝敗が決まる」と、共通点が多いように思います。

 

小野さん:ああ、ラップの感覚は近いですね。ラップ好きな人がリリック(歌詞)を自然に覚えてる感じとか、完全にそうですね。あと、ディベート大会っていい反論が決まったりすると会場全体が沸くんですけど、そのときの雰囲気はラップバトルでいいヴァース決まったときの盛り上がりと似てるように思います。
※ヴァース:ラップ用語。曲のうち、サビ(ラップ用語では“フック”)に至るまでの導入部分を指す。上手下手の差が出やすいパートとされ、ヴァースを聞けばラッパーの技量が分かるとも言われる。

 

編集部:小野さん、ディベート界のZeebra的な存在なんじゃないですか?

※:Zeebra:日本を代表するヒップホップ・アクティビスト

 

小野さん・倉田さん:(爆笑)

 

小野さん:足元にも及ばないと思いますけど、でもZeebraさんの「東京生まれHIPHOP育ち~」がラップを聴かない人にも知られてるように、ディベート経験ない人でも1度は聞いたことあるスピーチがつくれるといいな、とは思ってます。

 

マンガそのままの努力・友情・勝利の法則

編集部:さっき小野さんと岡山の対談で出たマンガ化するアイデア、ますます行けるんじゃないかって思ってきました。チームだし、個性的なキャラクターが出てくるし、国と国のバトルだし……。人気になる要素が揃ってる気がしてきました。

 

小野さん:そうでしょ? けっこう熱い展開とかドラマもあるんですよ。ペア競技なので、もともとペア組んでた二人が、いったん離れてそれぞれの環境で成長して、数年後にもう一回チーム組んで戦う的な。

 

編集部:まさに、ワンピース!

 

倉田さん:でもそれ、ディベート界ではリアルによくある話ですよね。去年、女性だけのディベート大会に出て優勝したんですが、そのときペア組んだ子との関係がまさにそんな感じでした。


大学のディベートサークルの同期で1年生の時から仲良くしていたのですが、私がアメリカに留学してからは、一緒にディベートをする事はなくなりました。1年生の時は中高からディベートをしていた私の方がチームの方向性なども決めていたと思うのですが、4年ぶりに組んでみたら全くそんなことなくて。むしろ彼女にチームの戦略決めをしてもらって、引っ張ってもらって優勝出来たくらいです。

 

 

小野さん:あれはドラマティックだったよね。僕が中3から組んでた岡くんの話もおもしろいかも。途中から別々のディベートキャリアを歩み始めたんです。

 

倉田さん:岡さんは、ジャッジとしてすごく知られてる存在で。私は大学の後輩に当たるんですけど、海外のディベーターと話してて自分の大学名を言うと、「ああ、岡くんの所ねー」って。

 

小野さん:彼はジャッジとしてのキャリアで審査員目線を身に付けたんです。僕のほうは、指導者として活動したことで基礎を徹底的に学び直すことができて。
大学4年生のときに再結成したら、お互いの強みがかみ合って、めちゃくちゃ強くなったんです。一緒に出た大会は、ほとんど優勝でしたから。

 

編集部:お互いを尊重し合ってる友達が、それぞれ努力して、最後は勝つって、ものすごくジャンプ的ですね。「努力・友情・勝利」みたいな。もうそのままマンガの脚本にできそうです。

 

キャラが濃いのは、自分らしくいられる環境だから

編集部:小野さんがおっしゃってたことでもう1つ気になったのが、クセの強い人が多いということです。マンガにする上でキャラが濃いのはいいことだと思うんですが、なんでディベート界隈に濃い人が集まるんでしょうか?

 

小野さん:変わってる人も、「おもしろいな」って受け入れてもらえるからですかね。いろんな国や文化の意見を聞き慣れていて、常識を疑う素地がある人が多いので。他のコミュニティーだったら誰も相手にしないだろうなっていう意見でも、その視点新しいなって好意的に解釈するんですよ。

 

倉田さん:同調圧力的なのもないですよね。小学校とか中学校だと、なんでもないことで浮いたりするじゃないですか。例えば、帰国子女が英語の発音が良すぎてからかわれるみたいな。それでわざと下手に話す子もいたりしましたけど。

 

小野さん:あー、そういうのあったよね。いとことか、学校でpotatoをふつうに発音しただけで「ポテイトだろ、ポテイト」とか言われたらしくて。

 

編集部:それはバカバカしいですね(笑)

 

小野さん:ディベーター・コミュニティーにはそういうのが全然なくて、マイノリティーな人たちはマイノリティーなままいられる環境は他のコミュニティーよりも整っているとは思います。一例ですけど、歴代の世界チャンピオンにもけっこうLGBTであることを公表している方が多くいます。ジェンダーのことで不利なったり、特別なにか言及されたりすることも少なくなってきていると思います。

 

倉田さん:日本の高校生とか若い世代にもLGBTを公言している人がけっこういるんですよ。
学校とかだと、まだまだ言いづらいところが多いと思うんです。特に男子高や女子高に通ってる子だと。ディベートが、そういう子たちにとっての居場所になっているって、すごくうれしいです。

 

「Equity=公正さ」に本気で取り組む

編集部:ある意味、第三の居場所というか、セーフティーネットとしても機能しているんですね。

 

倉田さん:まさにそうですね。他のコミュニティーと比べても、進んだ取り組みをしているんじゃないかなと思います。ディベート業界にはエクイティ・ポリシーっていう、倫理的な取り決めがあるんです。いろんな人が、安心してディベートに参加できるようにするためのルールみたいなものですね。

 

編集部:どんなルールがあるんですか?

 

倉田さん:人種差別とか、ジェンダー差別とかに当たる発言はしないように心がけるとか。誰かを傷つけないよう、細心の注意を払うことが求められるんです。試合中の発言はもちろん、ジャッジや観客として過ごす時間も含めてずっとです。

 

小野さん:論題も、その人にとって話したくないテーマの場合は変更を求めることもできるんですよ。例えば離婚とか、虐待のような辛い経験をされた方は、関連する論題を避けられる制度を用意する大会も増えています。

 

 

編集部:それって昔からそうだったんですか?

 

倉田さん:いえ、昔は差別的な部分がけっこうあって、それを打破しようとはじまったものです。もともと英国議会をモデルにしてることもあって、歴史的にイギリス人とかアメリカ人とか、欧米人が強くて。それで白人男性中心主義的な構図があったみたいですね。

 

小野さん:人種差別的なものは最近までありましたよ。僕が出てた2013年とか2014年とかも、アジア人ってだけで低く点数をつけるジャッジもいて。まあそれで逆に燃えた部分もあったんですが(笑)


エクイティ・ポリシーは差別をなくすだけじゃなく、初心者にも優しくしようっていう意図もあります。人前で話すのってただでさえ怖いじゃないですか? そこに上手い人たちがバカにしてきたりしたら、もう二度とやりたくなくなっちゃいますよね。それを防ごうっていう……

 

倉田さん:ジャッジの「聞く姿勢」も変わりましたよね。数年前までは初心者のスピーチを聞くときに気を抜いてスマホ触る人とか、高圧的な態度の人もいたんですけど、今はみんな真摯に聞いてるように思います。

 

小野さん:まだまだ新しい流れなのでみんなの意識が更新されている途中で、実際の運用にはまだまだ賛否両論ありますが、前進していってると思いますね。

 

ディベートを経験すると、生きやすくなる

編集部:英語の勉強ができて、趣味としても楽しくて、マンガ的な経験もできて、第三の居場所にもなって。ディベートって、 人生にとっていいことしかないですね。 

 

小野さん:実際、すごく役立つと思いますよ。相手の意図を考えるようになるから、人との関係性も変わるかもしれません。


例えば親子関係もそうです。親から弁護士になりなさいって言われてるけど自分はなりたくない場合、「オレは弁護士になんてなりたくない!」って感情的に言っても衝突しかないじゃないですか。

そこで、なんで親は弁護士になれって言うんだろうって考えて、手に職つけろってことかな?と仮説を立てるわけです。すると、専門職系の仕事のなかでどんな仕事なら興味を持てるかなって考えられるようになるわけです。

   

さらに子どもが「手に職つけろという主張は分かった。でもこれからの時代に求められてるのは、弁護士よりもAIエンジニアだ。オレはAIエンジニアになる」って言えば、親も聞く耳を持ってくれると思うんですよね。

 

編集部:中高生でそこまでできたらすごいですよね。

 

小野さん:ちょっと賢い子たちは感覚的にもしくは無意識にやってると思いますけどね。親が何を心配してるか考えて、そこだけ抑えとけばいいって感じで。ディベートをやることで、誰でもそれができるようになると思うんです。

 

倉田さん:そういうと、子どもが手に負えなくなるようにも感じちゃうかもしれないんですが、むしろ逆で。親が理由をうまく説明できない場合でも、子どもが意図を汲み取ろうとするようになれば、感情的なぶつかり合いにはならないですから。お互いの真意にたどり着きやすくなる気がしますね。

 

編集部:なるほど。逆に、親が子どもと接するときは、どんなやり方がいいんでしょうか?

 

倉田さん:やっぱり「なんで?」って聞くことですかね。子どもの主張にいきなり良い・悪いってジャッジするんじゃなくて、理由を聞くのが大事だなと思います。

 

小野さん:「なんで?」は大事だよね。子どもが「〇〇くんきらーい。きもーい」って言ったとして、いきなり「そんなこと言っちゃダメ!」って言ったら、そこで会話が終わっちゃうじゃないじゃないですか。絶対理由があるはずなんで、聞かないと。
親も子も、お互いに「なんで?」って聞き合うのがいいと思いますね。

 

競技として、エンタメとして、学びの場として……。さまざまな角度から、英語ディベートの魅力を語っていただいたお二人の対談。まるでスポーツや音楽に打ち込むように、英語ディベートを心から楽しんでいることが伝わってきたのではないでしょうか?

 

英語ディベートについてもっと知りたい、やってみたい!という方は、以下のページより詳細をご覧ください。

 

ESL club「英語ディベートスクール」

 

ESL clubでは、今後も定期的に英語ディベーターさんにお話を伺っていく予定です。どんな話を聞いてみたいか、ぜひご意見をお寄せください!

 

(執筆:田中ヤスヒロ)