輪読ゼミ責任者の荻野です。
さて、一般に世間では新しい本が出たらそれを即座に読む、新しく出てきた議論に即座にキャッチアップするのが重要と思われています。
しかし、実はそれらの議論は、「古典的地層」を踏まえた上でないと正しく読解できません。新しい学説や議論は、古典的議論を踏まえーそれに則るにせよ反抗するにせよー成り立ってることが多いのです。その意味で、理論史を歴史的に把握しない限り、新しい議論を正しく理解することはできません。
これは法学においても文学においても同じです。例えば民法であれば最新の議論は必ず我妻説を踏まえた上で成り立っています。あるいは、カール・シュミットの議論は、批判的にせよ、典型的にはアガンベンに、またハンナ・アレントにも引き継がれ、大きな影響を残しています。三島の提出した理論や文学も、それらに反抗するにせよ、後世の文学はそれを踏まえて成り立っています。政治的にも、「三島的なるもの」は大きな影響を残し続けています。
古典を踏まえた上で新しい議論、最新の学説を読むと、より味わい深く、深く読むことができます。これが古典を精読する意義だと考えています。
- この記事を書いた人
- 荻野 智明
駒場東邦中に進学。トップ学生だったが、物理と化学に嫌気がさし、医師である両親と同じ職に就くことにも嫌気がさしたため、私大医学部を蹴って東大に後期で入学。
人間に関わる人文系への興味が根本にあったため、哲学と法学を学ぶ。好きに学問を追求し、中国の占いを2年間独学し、今に至る。
・2006年 駒場東邦入学
・2012年 東京大学文科一類入学
・2018年 国家総合職経済区分合格
・2019年 東京大学法学部卒業