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人は簡単には変わらない
常識を破る生き方に挑戦する勇気が沸いてきたら、行動に移す前に知っておかなければいけないことがあります。
それは、『人は簡単には変われない』ということです。
これはホメオスタシスと呼ばれる、全ての人間に備わっている生命維持のための本能によるものです。本来は生物学で使われる言葉ですが、心理学の場でもよく使われています。ホメオスタシスの詳しい説明は省きますが、要は『今の環境をなるべく維持しようとする心理』です。
なぜこんな話をしたかというと、「よし、変わろう」と一歩踏み出したときに、「やっぱり、変わりたくない」という全く反対の感情とぶつかる人がいます。
その時に、
「ああ、自分はダメなんだ…」
「やっぱり、無理なのかな…」
と、自己肯定感を下げたり自己嫌悪をして欲しくないからです。
お腹が空いたり眠くなるのと同じように、変わりたくないと感じることは、人間の本能による当たり前のことで、決してダメなことではありません。
『変わりたくないと感じているもう一人の自分』と出会うことは、あなたが変わろうとしている証拠で、むしろ前進しているんだと喜んで然るべきことです。
理論編でも述べましたが、常識に囚われずにバックキャスティング的な思考で生きる為には、未来や自分自身に対して前向きな感情を抱いていることが非常に重要になります。
変わりたい自分と変わりたくない自分を両方受け入れ、前向きな気持ちで、この先の実践編に臨んで下さい。
常識を破る人たちをつき動かしているもの
常識を破る生き方をする人たちは『変わりたくないと感じているもう一人の自分という壁』を乗り越えた人たちということになります。
この壁を乗り越えるためのヒントは『人は感情の生き物である』ことです。
感動という言葉があります。「感じて動く」と書きます。
感動の対義語として「失望」や「幻滅」といった言葉がよく挙げられるますが、言葉の成り立ちを考えれば「理屈や論理で動く」を意味する『理動』という言葉が一番適当なのでは無いかと個人的には考えています。
しかし、この言葉は広辞苑などにも載っておらず、一般的な表現として存在していません。
もっと言えば、『感動』に当たる言葉は世界中に存在しますが、『理動』を意味する言葉は世界中どこにも存在しないそうです。
この事実から分かる事は、人は感情の生き物であり「人の行動は全て感情が決めている」という事です。
こう言うと、
「私は決して感情的な判断はせず、理屈で納得しないと行動しません。」
という反論があるでしょう。
反論し返します。
「理屈を通して、感情で納得した結果、行動を起こしている。」
と説明が出来無いでしょうか。
逆に、理屈や理論で筋が通っていると感じていても、行動を起こさないことの方が多いのではないかと思います。
例えば、あなたが喉が渇いてコンビニで100円の水を買おうとしたとします。
レジに水を持って行くと店員が
「今ならキャンペーンで、2本で180円です。水はどうせ必要なものですし、もう1本いかがですか?」
と言われてとして、あなたは2本買うでしょうか?
おそらく買わないと思います。
でも水はどうせ必要なことは事実です。
値段がお得なことも事実です。
理屈は通っています。
でもなぜ2本買うという行動をとらないのでしょうか。
それは、あなたは今飲む水が欲しかっただけで、水をお得に購入したかったわけはなかったからです。
感情は社長です。理屈という平社員がいくら最高のプレゼンをしても、社長がノーといえばノー、中途半端なプレゼンでも社長がイエスといえばイエスなのです。
さて、人の行動は全て感情が決めているのであれば、『変わりたくないと感じているもう一人の自分という壁』を乗り越えるのもまた感情だということになります。
つまり常識を破る生き方をする人たちを突き動かすのは、変わりたくない気持ちを上回るより大きな感情に突き動かされていて、世間ではこれらの感情のことを『ミッション』や『ビジョン』といった言葉で表現されます。
ビジョンやミッションとは、心の底から思っている感情を、言葉に変換にしたものです。
だから何か特別な結果を出した人は、子供に向けて同じようなことを言います。
「幸せになりたいなら、心から好きなものをやりなさい」
「何かに夢中になれば、いつか結果がついてくる」
私は昔、これはキレイ事だと斜めに聞いていましたが、今はすごく本質をついた言葉だと感じています。
彼らはどうやったら幸せな人生を歩めるのか、本能的に分かっているのでしょう。
ミッションやビジョンなどというと大袈裟ですが、何かに夢中になって寝食を忘れた経験は誰にでもあると思います。
仲間たちと語り合うのが楽しすぎて、少しも眠くならなったあの夜。
大好きなあの子との念願のデートを成功させるのに必死で、食事も忘れていたあの日。
ビジョンやミッションとは少し違いますが、強烈な感情が突き動かしているという根本的な原理は全く同じでは無いでしょうか。
2019年でメジャーを引退したイチロー氏の言葉も印象的です。
記者会見で、子供たちへのメッセージをという記者の質問に対し、
「自分が夢中になれるものを早く見つけてほしい。それが見つかれば、壁が来てもそこに向かっていくことができる。そうでないと、壁が来たら諦めてしまいます。いろいろトライして、自分に向くか向かないかより、自分の好きなものを見つけて欲しい。」
と答えています。
常識を破る生き方をするとは、生涯をかけて夢中になるものと出会い、そこにエネルギーを注ぐ生き方とも言えるかもしれません。
感情のトリガー
「じゃあ、頑張って夢中なものを見つけてください!」
では終われませんね。
そもそも、夢中なものを探しても見つからない人が理想と現実の間で揺れているわけですから。
一つ断っておくと、夢中になるものなんてそう簡単に見つからないし、もっと問題なのは、そもそも探し方に正解はありません。
もちろん私にも分かりません。
でも、夢中の種を探す事は出来るのではないかと思っています。
その種とは、あなたにしかない『感情のトリガー』を見つける事です。
『感情のトリガー』とは、何か感情を抱いたときに、なぜその感情を抱いたのかという根本原因のことです。常に何かに夢中になっている人は、自分だけの『感情のトリガー』に気付くのがうまいとも言えるかもしれません。
私自身で例え話をしましょう。
私の感情のトリガーの一つに、「自分で決める」というものががあります。
何事も自分で決める事は好きで、何事も他人に決められることが嫌い。
仕事でいえば、企画やライティングは好きで、ルーティンワークやマニュアルをこなす事が嫌い。
仮に同じ仕事をするときでも、自分で期限を決めた時と、他人に期限を決められた時ではストレスのかかり方が変わります。
このように、一つ感情のトリガーを見つけるだけで自分の感情の癖が良く理解できます。感情の癖が理解できれば、自分が夢中になれるものに近づいた気がしませんか?もちろん感情のトリガーは一つではないのでそう単純ではありませんが、一歩近づいたことに間違いはありません。
あなたの感情トリガー
さていよいよ、あなたの感情のトリガーを見つける番です。
そのために是非行動に移してほしいことがあります。それは、
〖今日から1ヶ月間、1日1個、必ず『小さな初めて』を取り入れる。〗
初めての道を通って家に帰る。初めての曲を聞いてみる。初めての店でご飯を食べてみる。
コンビニで初めてのものを買ってみる。本屋で初めての本を立ち読みしてみる…。
例を挙げればきりがありません。
なぜ初めてを取り入れるかというと、初めての経験をすると感情のセンサーが活発に働くので、様々な感情が芽生えやすい状態になるからです。
感情のセンサーが活発な状態では、あなただけの感情のトリガーを見つけることは難しいことではありません。
そしてこの『感情のトリガー』を見つけた時に、時に人生を大きく変える事があります。
ウォルト・ディズニー。
言わずと知れたディズニーランド創設者ですが、「大人も子供も楽しめる、夢のような場所を作りたい」と、15年の構想の末に創り上げたものです。
よほどの情熱で取り組んだのだと思いますが、彼ですらきっかけは本当に些細な事でした。
そもそもアニメーターとして仕事をしていたディズニーは、「どうやったら多くの人に愛されるキャラクターをつくれるだろうか」と考え、何となく飼っていたネズミを紙に描いてみたました。これが後のミッキーマウスです。
また別の場面では、ディズニーは娘とたまたま遊園地に出かけていました。娘が遊具で遊んでいる間、ただ待っていて退屈な自分に気づき、「どうして大人と子供が両方楽しめる遊園地が無いのだろう」という疑問を抱きました。これが後にディズニーランドの構想になります。
もし彼がねずみを絵に描かなかったら。
遊園地でただ「つまらなかった」と終わっていたら。
今のディズニーランドは無かったことになります。
彼にとって『一人でも多くの人に喜んでもらうこと』が非常に強い感情のトリガーだったのかもしれません。
だから一人でも多くの人に楽しんでもらえるディズニーランドの構想を、夢中で取り組んだのかもしれません。
ディズニー自身は生前、
「夢を見ることが出来るなら、それは実現できるんだ。いつだって忘れないでほしい。何もかも全て一匹のねずみから始まったということを。」
という言葉を残していたそうです。
とても勇気をもらえる言葉ですね。
もちろん、だれもがディズニーのように歴史に名を残すような偉業を成す為に生きるのではありません。
あくまで感情のトリガーを見つける目的は「あなたが幸せな人生を歩むため為」です。
そのために必要なのは、ほんのちいさなきっかけ、そのきっかけを掴むための小さな一歩です。たった、それだけです。
最後に
理想と現実で揺れ動く人が『常識を破る生き方』を選択し、自分の人生の可能性を広げて欲しいという想いでこの記事を書きました。
でも私は知っています。
この想いが決して多くの人に届くわけでは無いことを。
ひょっとしたら、誰にもこの想いが届かないかもしれないことを。
いや、そもそも誰も読んでいないかもしれないことを。
それでも、あなたがこの記事を読んだことで人生に大きな変化を起こす可能性がゼロでも無いことも、知っています。
その可能性がゼロでないことを思うと、手を止める事が出来ませんでした。
私は、あなたが秘めている本音という小さな小さな種火が、常識という大雨に消されてしまわないように、傘を渡してあげる事しかできません。
その傘を受け取るかどうかは、あなたが自身が決める事です。
その種火を大きくするかどうかは、あなた自身が決める事です。
あなたが常識を破る生き方を選択し、笑顔の多い人生になる事を心から願っています。
(執筆:石原 一樹)