わたしの専門
実は、わたしの専門はカール・シュミットなのですが、シュミットについて書いた雑文をここにあげようと思います。ご笑覧ください。
出世・学問・操作性 ~カール・シュミットとその「学問的誠実性」~
20世紀前半を代表し初期ナチス公法学のインサイダーであった法学者カール・シュミットがヴァイマル期に提出した諸概念と諸命題には、その法理論的厳密性と裏腹に、法学のインサイダーではない非専門家からは否応なく政治的扇動性が読み込まれてきた。
「例外状態」概念と「主権者は例外状況において決断を下す者である」という命題*1は上からの強権的戒厳令を、民主主義における統治者と被統治者の「同一性」*2は人種的同種性を、「敵味方対立」*3は武力を所有し闘争的に相争う諸政党を連想させる。彼が自己の「出世」*4のためにそれらを提出したかは手に入りうる一次資料からは定かではないが、実際に「例外状況」と彼の厳密なヴァイマル憲法48条解釈は反ユダヤ主義的ナチス独裁への道を切り開き、「政治的なものの概念」はそれを巡る敵味方対立を惹起し、彼のプロイセンおよびナチスにおける出世に貢献した。
それでなくとも、シュミットの学問的手法には政治的操作性が付き纏う。彼は対立物の調停には好印象を持ち積極的に政治加担する他方で(「独裁制」と「民主制」を同時に両立するローマ教会*5、「民族主義」と「社会主義」の対立を調停したナチズム*6)、既に仲睦まじい概念同士を「相争わせ漁夫の利を得る」*7ことに極めて長けている。自由主義を民主主義を、法治国家思想と主権概念を互いに対立させ、立場を明確にはせずそのいずれかの決断を迫る。シュミットが真に評価するのは対立概念の調定であることには注意したいが、いずれの概念が政治的に勝利しようとシュミットの政治的利益になるのである。
*1)「政治神学」
*2「憲法論」
*3) 「政治的なものの概念」
*4「教会の可視性」
*5 「ローマンカトリックとその政治的形態」
*6「法的思考の三類型」
*7)「法的思考の三類型」
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