カール・シュミットについて

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法学者カール・シュミットの生涯と業績

 以下の記述はダイヤモンド社『危機の政治理論』末尾の長尾龍一による解説「カール・シュミットー人と業績」に一部負っています。

 20世紀を代表するドイツの法学者カール・シュミットは、初期ナチス公法学のインサイダーとして知られていますが、もっとも活躍し刺激的なパンフレットを書いたのは戦間期ドイツ、つまりヴァイマル期においてです。

 シュミットの弟子ベッケンフェルデは多様に展開されるシュミットの議論の「消失点」は「政治神学」にあると述べていますが、まさにその通り、最晩年の作品はカトリック神学から政治(化された)神学への批判に対する自己弁護に向けられた「政治神学Ⅱ」でした。「例外状況」などの扇情的キーワードだけが一人歩きしているこのパンフレット、『政治神学』がどのような理論を展開しているかは、自らの手で一文一文精読した者にしか分かりません。入門書をいくら読み、キーワードだけ暗記しても、一回の原典の遅読に勝るものはないのです。

 さてシュミットを研究する意義ですが、20世紀を代表する政治現象の一つはファシズムであることは間違い無いでしょう。シュミットの議論はその全てが権力国家、いわゆる独裁国家の正当化、言い換えれば西洋的諸価値としての「三権分立」や「法治国家」への攻撃に充てられており、その意味で内部から内在的に、ファシズムの学理を追うのに必須です。その意味では、ファシズムの理論的支柱とされたエルンスト・ユンガーの研究もこれまで以上に必須になってくるでしょう。
  政治学者脇圭平はその著書「政治と知識人」の序文において、ファシズムを内在的に研究できる機会を逃しては、またあの「悪女」に引っ掛かるであろうと、楽観論を戒める恐ろしい予言をしています。

 またシュミットの学識は徹底的に歴史的に展開されており、その射程はとても広く刺激的であることがいえます。左派文学者が政治活動を展開したヴァイマル初期において、ロマン主義者がそもそも政治=決断に向いていないことを歴史的に暴露した『政治的ロマン主義』は、文学専攻の学者にも広く知られている古典となりつつあります。
 あるいは『政治的なものの概念』は政治学領域で広く知られる古典となりつつあり、有名な「敵味方関係」概念がどのような理屈のもとに展開されているのか、テクストを精読することで分かってくるでしょう。弟子のレオ・シュトラウスはアメリカのネオコンの理論的支柱とされていますが、彼による注解も読みたいところです。

 古典輪読ゼミでシュミットに関心を持った方とは、まずヴァイマル期の著作である『政治神学』から精読していこうと考えております。シュミットの主要な著作のほとんどは『カール・シュミット著作集Ⅰ・Ⅱ』に一級の法学者による優れた翻訳が収められているので、それらを購入していただけると幸いです。それ以上の関心がある方には、より初期の作品『国家の価値と個人の意義』や、『教会の可視性』、あるいは戦後の『全ヨーロッパ的解釈におけるドノソ・コルテス』や『攻撃戦争論』にもご招待しようと考えております。ご関心のある方に置かれては、サイトから問い合わせしていただけると幸いです。

 

この記事を書いた人
荻野 智明

駒場東邦中に進学。トップ学生だったが、物理と化学に嫌気がさし、医師である両親と同じ職に就くことにも嫌気がさしたため、私大医学部を蹴って東大に後期で入学。
人間に関わる人文系への興味が根本にあったため、哲学と法学を学ぶ。好きに学問を追求し、中国の占いを2年間独学し、今に至る。

・2006年 駒場東邦入学
・2012年 東京大学文科一類入学
・2018年 国家総合職経済区分合格
・2019年 東京大学法学部卒業

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